消してみな

 
(以下、20061224更新)
 
スピリチュアル(ミスコーナー、ゴムナパース)→カウンター(ディスチャ)→スピリチュアル(SPC)。
トップバッターはミスコーナー。やっとライヴが見られた。音源では、曲の中には熱が激しく在るというのがわかるものの、やはり打ち込み主体のせいか、どこかクールというか重みのないイメージが残ったのだけれど、ドラムセットが向かい合ったステージに2人が出てきた、ただそれだけで、ああこれはぜんぜんクールじゃないな…というのがいっぺんに伝わってきて、思わず身構えながら演奏開始を待つ。息を呑むようなタイミングで流れ始めた電子音。そして、絶叫しながらドラムセットに殴りかかる左側の人。右側の人は割と冷静に見えたが、とにかく左側の人の発狂ぶりから目も意識もそらすことが出来ない。何この凄まじさ…!打ち込みのピロリンとした音をバック(?)に、こんなにも熱く激しく狂ったものを鳴らしてくるとは…。もう声も何も出なくて、ただひたすらぼーっと突っ立っているしかなかった。最後のほうで照明がバツッと落ちて真っ暗になったのだが、あれがさらに彼らの鬼気迫るオーラを増幅させていたように思う。ただただ、圧巻。とんでもないもの見ちゃったよ…(身震い)。見かけが20代前半くらいにしか見えなかったていうのにもまたびっくり。実際幾つか知らないけど、あの若さ(?)であんなもんやっちゃうなんて…。ひえええええ……。
次はゴムナパース。恥ずかしながら初見。これまた一度見てみたかったバンドだったので、威勢良く前のほうでみてみる。マイクが1本も立ってなくて(インストバンドでも1本くらい立ててるバンドが大半のような気がするのだが…)、ドドーンと、存在感も年季もバシバシと感じさせる3人がステージに登場したその瞬間から空気が変わる。うお…なんだこれは……。曲調は想像よりも激しくはなかったのだけれど、とにかく、重いな…と。重く暗い曲調…とかではなくて、音とかとにかくぜんぶが重い。重いというか、重みがある…というか。そして、黒い。重くて黒くて、ずしーんずしーんとくるかんじ。やばいなあ…これもえらいかっこいいなあ…。こういう言葉でくくるのも各バンドに失礼に当たるのかもしれないが、やっぱり札幌のバンドに共通するのは、こういう重み・黒さ、なんじゃないかなあ(キウイ以降は黒くない気はするけど)。どうにもこうにも語彙が足らなくて、これ以上何も書けないのだけど…。とにかく、圧倒された、ミスコとはまたぜんぜん違う意味で。ミスコは2人の狂いっぷりに声も出ず…だったが、ゴムのほうは、ズッシリくる重さを受け止めるのに精一杯で…というか。あーなんか誰かが「トーキョウとかの若いバンドはみんなうすっぺらい(から、つまらない)」みたいなこと言ってたの、なんとなくちょっとわかっちゃったかも…。こういう重みのあるバンド、確かに居ないよね…他地域には。それが良いか悪いかってのはわたしにはよくわかんないんだけども。まあ単に好みの問題とかもあるしね…。
ゴムナパース終わって即、カウンターへダッシュ狸小路を突っ切って走る走る。階段を駆け上がりドアを開けると、ちょうど転換が始まったところらしく、ステージ上にメンバー4人の姿が。…って、あれ?4人?…よよよよーさん!?なぜか、3人編成のはずのディスチャの真ん中にジャンパーを着込んだ吉村さん(もちろんbtbの)が居て、あのオレンジのテレキャス(もどき)のチューニングをしておられた。いや、昨日の段階で、吉村さんが参加するとかいう話をなんとなく伝え聞いてはいたのだけど…。最後に1曲飛び入りとか、そういうもっとラフな?感じかな…と勝手に想像していたのだった。そんな、足下にいろいろ並べて初っ端から真ん中にドーン!て居るとか思ってなかったし…*1。というわけで、向かって右端にたまきさん、真ん中奥にのっちさん、左端にえびさん、そしてど真ん中によーさん、という配置。今夜限りの?特別編成でのディスチャ。わーい、わーい、ドラムがのっちさんだーーー(まずそこか)。前半3曲はよーさんは居なくて、関内のときと同じく3人での演奏。え「えー、いきなり新曲やります」(お!?)「いた、という曲です」(ああ関内でやったやつか…脅かすない!)(いやべつにえびさん脅してない)。静かな導入部から始まり「君のことなんだけど、とても嫌いなんだ…」みたいな歌い出し。最初に関内でこの曲を聴いたとき、えびさんの歌詞で「嫌い」てのはめずらしいな…と、まず思ったのだけど*2。先日は、歌詞を聴くのと曲を聴くのとでは曲を聴くほうを優先してしまっていて、ほかの部分の歌詞をあまり聴き取れていなかったが、今日もう一度聴いてみると、メロディにのせて驚くほどすんなりと詞が流れ込んできて、ああそうかこれはこういう内容だったのか…と。最初から「嫌い」なんていっていて、でもタイトルは「いた(居た?)」で、一体これは何がどう繋がって(?)いるのかしらん…という疑問があったのだけど。うーん、果たしてこれで解釈があっているかどうかはわからないが(じゃあ書くな)、たぶん、嫌いっていうのは逆説で(これは最初に聴いたときからそう思っていたのだが)、ほんとはそうじゃなくて、逆の感情が強すぎて、むしろそこにその「君」が居るのが疎ましくすら思える…というか。でも、今は、もう、その「君」もここには居なくて…*3みたいな。だから、「居た」(過去形)なのかな…と。あああなんだか意味不明でごめんなさい。しかし「嫌い」て言いながらこんなにやさしいうたになってしまうのは、やっぱりえびさんだから…なんだろうなあ。おもいきり断言してるのに、でもニュアンスは遠回し…みたいな。よく聴くと、男のわがまま放題っつーか独り善がりっつーか「ウダウダ言ってんじゃねーよ!」みたいな内容なのに(たぶん)、あー…良い曲だなあ…なんて思わせてしまうというのは…ね。まあそれはもちろん、えびさんはアーティスト(?表現者?)だから…というのがあるのは当然なのだろうけれど。でもさ、やっぱりずるい、ずるいよえびさん(何が)。しかしこの曲、ほんとうにたまきさんのギターがはんぱなくすてきだった。のっちさんのドラムもすてきだった。えびさんに関しては、どちらかと言われればハンドマイクのほうが好きなのだけれど、えびさん以外のメンバーというか組み合わせとしては、この3人編成が特に好きだなあ…。5人編成も2人編成(=えびさんのっちさん)も良いけれども。個人的には3人編成がいちばん好みの音かもしれない。2曲目は溜息電車。これは関内のときはマイクの線が抜けて(?)やり直したりしていたけれど、今日はトラブルもなく。え「えーと、この3人で、こないだ横浜でも(ライヴを)やったんですけど、今日のほうが良いです、調子良いです」。うん、まあ確かにそうだけど…それ横浜(関内)しか行ってないひとが聞いたら泣いちゃうよえびさん…(遠い目)。3曲目は逃避行。え「昨日もやった曲なんですけど…」。ええもう何度でもやってください(何)。この曲ほんと好き。特にのっちさんドラムver.が好き。のっちさんのドラムの、特にスネアの「タンッ!」ていうのが、えびさんの声にぴったりな音だなあと思うので。えびさんの歌の中で脈打つ鼓動…みたいなかんじ。たまきさんのギターや鍵盤の音は、流れる血液みたい…なかんじ…だとおもう(なんとなくそういうイメージがあるということ。自分の中で)。出演バンド数とこのあと吉村さんがゲストで出てくることを考えたら、このメンバーでの通常ver.(?)は3曲くらいかな…と思っていたので、その中にこの曲が入っていてうれしかった。曲数は3だけど、たっぷりたっぷりえびさんのうたを堪能したところで、ジャジャーンと吉村さんが登場。え「まあ、さっきから、ここに機材とかあるんで、みんなわかってたと思いますけど…」。なんか、えびさんのMCも、札幌だとほんと"地元"なかんじで、知り合いに話しかけているようなラフな空気。「今日はメルトバナナ来てるし…スパイラルコードもあるんで…スピリチュアルラウンジから途中で抜けて来てくれた人も何人か居ると思うんですけど…」とか言ってたりもしたし(つーかまさにそのパターンですが何か)(エアロとかTAXI'Sとかのみなさんごめんなさいごめんなさい)。早速椅子に座ってオレンジ色のテレキャス(もどき)*4を取り出した吉村さん「えー、こんばんは。あのー、前にもディスチャーミングマンとは対バンしてまして、こいつ…えび…の歌を聴いて、すごく気に入った曲がありまして。それを歌わせろ、ということで、えー、歌わしてもらいます。消してみな、という曲です。彼の、ディスチャーミングマンの曲を、僕が、歌います。では…」。おおお、消してみな、か。のっちさんのカウントが入って、よーさんのギターが鳴り始めた途端、いきなり場内が轟音地帯に変貌。さっきまではしっとり穏やかなアコースティックの空間だったのに…*5。ディスチャの曲を歌う…と吉村さんは言ったけれど、あれはもう完全に"吉村秀樹の"歌になっていたと思う。作詞作曲はえびさんかもしれないけど、ギター1音掻き鳴らしただけで、すでにそれは彼のものになっていたのだから。やっぱり吉村さんは凄い。ギターと歌、両方に備えられたとてつもない存在感。ハンパないね…さすがに。昨日のベッシーで「えびの歌はキーが高くて…」とMCでこぼしていたのもあって、やはりキーは少し低くしていたのだけれど。そんなことはどうでもよくなるくらい、圧倒的に"吉村秀樹"だった。こりゃあさすがのえびさんも完敗…かも?と思ったけれど(実際えびさんはかなり憔悴した表情になっていたけれど)、そこはそれ、えびさんももちろんガツンとやってくれたわけで。え「いやあ…なんか、夢みたいっすよね…。自分の曲を、憧れの人に歌ってもらうってのはね…」。吉「えー、次は、こいつが、僕の…曲を、歌ってくれるそうなんで」。え「あっの、ほんと、おこがましいんですけど…。俺がbtbの曲でほんと、一番てくらいに大好きな、ベスト3には必ず入るな…っていう、曲を。ほんと、聴くと毎回泣いちゃう曲なんですけど…。happy endという曲です」。うわ…ちょ…待ってえびさん!ははははっぴーえんどって?まじで?確かに今日のえびさんは、ギターにbtbのyamaneをくっつけていたのだけれど。だからyamaneの中に入ってる曲なんだろうな…というところまでは想像できていたけれど。でも。まさかhappy endだなんて。わたしもこの曲はだいすきで、ライヴで聴くと毎回泣いちゃうのに…。しかもそれをえびさんが歌うだなんて。えびさんの口から「happy end」というタイトルを聴いただけで全身が震えたのだから…歌い始めたら…当然……。あーもうなんだよなんなんだよえびさん。そこでその選曲は反則でしょやー…ばかー……涙。吉村さんの「消してみな」で圧倒されて、まだその余韻もぜんぜん冷めてなかったのに、さらにこれで畳み掛けてくるなんて。吉村さんもえびさんの曲を完全に自分のものにしていたけれど、えびさんも、えびさんの「happy end」を確かに鳴らしていた。えびさんの少年のように澄んだ声での「happy end」は、吉村さんの歌うそれとはまた違った世界で、なんだかとても青く、透明で、やはりこれも新たに"ディスチャーミングマンの"歌になっていたと思う。このまま続けて吉村ソロが始まるとのことだったが、すぐにスピリチュアルラウンジに戻らなくてはいけなかったので、そこで潔くカウンターを後にした。時間的には1曲くらいなら吉村さんの歌も聴けたと思うのだけど、なんとなく、ちょっとの間だけ独りになりたかったから。この余韻を噛み締めたかった、ちょっとだけ独りで。雪の降る中をジャンパーのフードをかぶってとぼとぼと、顔についた雪が体温で解けたのだ…というふりをして左手でじぶんの頬を何度もぬぐいながら歩いた。
再びスピリチュアルラウンジに着くと、ちょうど人がわらわらと出てきたところだった。ああTAXI'S終わったのか…。階段も恐ろしく混んでいて、やっとのことで中に下りて行くと、ものすごい人数でごった返していて、どうにもこうにも。でもどうしても右側(=ネ申側)でギターの音を浴びたかった(というか、カウンターでの余韻をハンパに残すのは嫌だったから、いっそドカーンとヤられてしまいたかった)ので、入口付近よりは空いているであろう奥のほうへとなんとか移動。背の高い男性客が山盛りな上にタバコの煙がすごくてキツイなあ…と思ったけれど、もう今更戻ることも出来ず。端に留まってそのまま開演を待つ。GG氏は左耳にピアスを5個もぶらさげて、相変わらず眼光鋭くタバコをふかしつつ…のセッティング。こええええ…でもすごいわくわくするー(何)。セッティングが終わって客電が落ちて、SEが流れてメンバーが出てきたら、ものすごい歓声。そのぜんぶが男子。演奏が始まるとまんなか辺りが雪崩みたいに押し寄せていって、思わず勢いではじき出されてしまった。こわいよー…でも楽しいよー(何)。何度か押されているうちになぜか前のほうにきてしまっていて、気づくとGG氏がすぐそこに居た。ヘラさんとアイコンタクトをして3人で一斉に叩きつけると、すぐそばのスピーカーから爆音ノイズが撒き散らされる。うおおおおお…たまらん。これだよ…これがほしかったんだよ…(嬉)。新曲やりまーすと言って鳴らし始めたので、ふと足下をみたら、デラックスメモリーマンが置いてあった。おお…新兵器。GG氏の足下機材は大抵見た目にも分かる加工(MXRはほんとは黄色(?)ランプなのに青色LEDになってるとか)が施してあるのだけど、メモリーマンはそのままだったような気がする。ギョワワワワワワーーーみたいな音を出してたかな…(機材のことはよくわかんないんだけど)。新曲は全体的に若干明るい(?)感じだったかも。途中のMCで物販の宣伝とかもしてて、ちょっとGG氏がおもしろかった*6。「(グッズとかは)特に机の上に広げたりとかはしていないんで、気になる人は声をかけてくれれば…」とか言ってたけど、ネ申にきがるに声をかけられる猛者なんてそうそう居るわけないとおも…うよ。DVDを客が「買いました!」て言ったら、チューニングしながら顔色ひとつ変えずに「ああそう、じゃあもう1本買ってね」て。はいすみません買わせていただきますごめんなさい…みたいな。目が笑ってないのに語尾が「ね」だなんてそれ怖すぎるよネ申。実はそういうのわかっててそれ利用して(?)売り上げ伸ばしてるっしょネ申(何)(ごめんなさいごめんなさい)。ヘラさん今日はタム破かなかったなあ(毎度破かれても…)。中尾君はやっぱり最後、ステージ袖に体ごと突っ込んでってた(そして勢いよくたわむ腹肉…)(それは言うな)。いつどこでみてもSPCはSPCで、期待通りの轟音で、耳が死んじゃう(もちろん今日も死んだ)。GGさんはいつもネ申で、ヘラさんはいつもとんでもなくかっこよくて、中尾君はいつも全力で暴れてる。やっぱかっこいいわ…SPC。今年は彼らを東京札幌福岡で見られてほんとしあわせだった。来年もがっつり見るよ…!
ミスコとゴムナパースも見られて、スペシャルなディスチャ(withよーさん)もあって、最後はネ申でシメて…。非常に濃い1日だった。やっぱ札幌最高。地元万歳。
 
ディスチャセットリスト
いた(新曲)
溜息電車
逃避行
消してみな(Vo.吉村秀樹)
happy end(btbカバー)
 

*1:しかしこれはあとで気付いたのだが、足下の機材は、べつにディスチャ用というわけではなく、このまま次の自分のソロで使うために予め仕込んであっただけ…という話。位置が真ん中なのも、ディスチャの編成との兼ね合いでもあり、次の自分のソロのためでもあり…だった模様。いや、ディスチャでもエフェクタは幾つか使っていたけれど…

*2:わたしはそんなすごい年季の入ったキウイファンというわけでもなければえびさんの歌詞研究家(?)でもないので、実際よくわかっていないだけなのかもしれないが…

*3:具体的には覚えてないけど、なんか「もう君は居ない」みたいな歌詞が後半にあった気がする…

*4:有名な話かもだが、あのギターは、吉村さんが、ゴミ箱に捨ててあったボディ部分と手持ちの各パーツを組み合わせて製作したオリジナルなのだそうです。

*5:いや、トップのエアロのときもやっぱり轟音地帯だったとは思うけど…わたしは見てないので。ごめんなさいごめんなさい。

*6:最近大体おもしろいんですけど…