海に映ゆる

 
ざーざずーに行って来た。ひょうたん企画。
トップバッターはグループイノウ。
客席がざわつく中、ふっと客電が落ちてSE(どういう音だったかはうまくいえないけど、ANAの登場時もこういう音楽がかかっていた。ババーン!て感じの曲)(どんな説明だよ…)に切り替わり、そんな曲調に反して2人が非常ーーーにのっそりと登場。佐藤さんは紺のパーカーにツータックパンツで、今井さんはシャツに紺のトレーナーを重ね着+チノパン+ななめがけバッグ+めがねという出で立ち。
今井さんが「えー、グループイノウです」みたいな挨拶をしている横で、佐藤さんは缶チューハイを手にステージ上をゆるゆると徘徊。でろでろーんとした口調で「じゃーはじめますかーー」みたいなことをぶつぶつ言ってるんだけど、なぜか微妙に始まらない。なんか、佐藤さん、ちょっと緊張してるっぽい。
そしていきなり今井さんの打ち込みトラックが爆音で鳴り始め、佐藤さんが手を高く掲げながら前に出てくる。おおはじまった!と思いきや、佐藤さんはなぜか最前列にいたお客さん数人に「ねえ、誰を見に来たの?」「グループイノウ?」とかぼそぼそ訊いて回っていて、肝心の歌(ラップ)を始めない…。ええとあのー……そろそろ始めてくださーい…。
やっとこ佐藤さんがラップを始めたと思ったら…その内容が「トー!トー!ティー!オー!イー!でトー!」て。おーい。
佐「さっき開場したときー、俺、受付に立ってたんだけどー」
(今井さんは引き続きトラックを流している)
佐「"誰を見に来たんですか?"(←店員のマネ)"トー"(←客のマネ)」
佐「"誰を見に来たんですか?""トー"」
佐「"誰を見に来たんですか?""トー"」
佐「"トー"!"トー"!"トー"!みんな"トー"!」
(ここでトラックが鳴り止む)
佐「グループイノウ(目当て)はいねえのかあああああああ!!!!!」
(また爆音トラック開始)
大笑。
佐藤さんは、toe人気を妬んでいるというよりも、自分らを見に来た人が少なさそうなのが悲しかったらしい。(かわいi)(え?)でも、途中で「えっとーじゃあこの中でグループイノウを見に来たっていう人?」と言って挙手させたら、意外にも(?)10人以上は居たので、その途端に照れ臭そうな表情を浮かべたてみたり。
佐「あ、なーんだ…けっこういるんだ…。ありがとうございまっす」
えええ…てゆうかそれじゃただのかわいい人じゃん佐藤さん…なんだよー…。(何が)
今井さんはずっと頭振りまくり&めがね飛ばしまくりで(でもいちいちめがね拾ってかけなおしてた)、佐藤さんは何曲かはフロアに下りて(突っ込んで)歌ったりしてた。やっぱりテンション高いなー!楽しい!でも、終始はっちゃけてはいたんだけど、やっぱり佐藤さんがちょっと硬かったような気がした。3曲目くらいの時に、イントロ部分(トラックの前奏部分)で(あんまりマイクに声を入れないで)、
「俺はねー昔からeastern youthとか聴いてたわけですよ」
「それがねー楽屋にいったら(にのみやさんが)いるわけ」
「緊張しないわけないっちゅうの…!」
とか喋って(歌って?)たしね。そっか…佐藤さんもキッズなんだね!キッズだったんだね!(キッズて)
そうそう、今井さんのMCによれば、グループイノウもとうとう音源(CDとDVD)を出すらしい。
今「僕はソロで(音源を)出してて、佐藤君も別にバンドをやってて、音源出してるんですけど」
今「最近は圧倒的にグループイノウが呼ばれるんでね」
uri gagarnあんまりライヴしてないもんね…)(遠い目)
今「そろそろ、グループイノウでも(音源を)出そうかということになりまして」
ふーむ。DVDはおもしろそうですなー。
佐藤さんはずいぶんtoeのことをネタにしていたが、実際toe目当てのお客さんが大半ではあっただろうけど、グループイノウもかなり盛り上がっていたように思う。一緒に見ていたS(N)さん(=グループイノウ初見)も楽しかったと言っていたし。
で、この次がtoeだったんだけど…。
グループイノウが引き揚げていった途端、後ろから一斉に押しがくる。えええ。前のほうにはカメラの人とかも来たので、更にぎゅうぎゅう。特に柏倉さん側。男女どちらが多いということもなく、とにかく人が山盛り。すごいなあ…。toeがここまで人気が出てきたのはつい最近のことのように思うのだけど。今度スペシャの企画イベントにも出ちゃうしねえ…。なんか去年のナツメンみたいに一気に躍進しそうな気がする、今年。人気出るのはべつにいいけど、チケット取れなくなったら嫌だなあ…。(イッツわがまま)
toeは今日はちょっとメンバーの配置が変わってた。山嵜さんがかなり前(中央寄り)に出てて、柏倉さんはいつもと同じ、山根さんが山嵜さんの後ろに入るようなかたちで、美濃さんは、真ん中なんだけど山根さんの横の位置よりも更に後ろに下がっていた。柏倉さんを中心に円を描くような感じ。アンプも、以前はギターベースギターとずらり横に並んでいたけれど、今日はそれぞれプレーヤーが背負うようなかたちになっていた。美濃さんのはほぼまっすぐ客席に向いていて、山根さんのはやや内側、山嵜さんのはほとんど柏倉さんと向かい合っているという状態。この配置、ちょっと去年のワンマンを思い出させた。
ドラムセットのチューニングをしている柏倉さんの前には、その手元をじーーーっと見つめるたくさんの目、目、目。山嵜さんの前に居た人達ももしかしたら山嵜さんをじっくり見たりしていたのかもしれないけど、柏倉さん前に居た人達はほんとうに真剣にずっと見つめ続けていたように思った。確かに距離も近いし、あのドラミングを一度生で見ちゃったらそうなるのもわかんなくはないけど…。それにしても、柏倉さんが余計なプレッシャーを感じてしまうのでは?というくらい、ほんとにみんなじっとりと見続けていて、あそこらへんだけちょっと空気が違ったような気がしてしまった。(ああこれ演奏中じゃないよ、セッティング中から既に…という話)(柏倉さんてば演奏前から大人気!)(え)
ふっと照明が落ちて、いつものように山嵜さんと柏倉さんのアイコンタクトで演奏開始。
シェルターとかとはまた違う音響。なんか、ステレオみたいな音空間だった。ちょうど柏倉さんを囲んでまあるくなってる中心あたりの位置にいたからかも知れないけど、いっこいっこの音がくっきりと立体的に重なり合っているさまがまるで目に見えるかのようだった。"見える"というより"頭の中にイメージが出来上がってゆく"イメージ…なのかな。真っ白い一枚の画用紙のような平面を、ドラムとギターとベースで次々に立体に変えてゆく…みたいな。飛び出す絵本は紙を切り抜いて立体にしてるけど、あれよりもっと一気に3次元化していて、すでに個別で出来上がっている立体がざばざば地面から飛び出して(生まれて)くるような感じ。ちょっと無機質な感触もありつつ、時折あがる山嵜さんみのさんの絶叫にはっとさせられたりもする。高層ビルが立ち並ぶ様子を上空から見たならきっとよほど無機質だと思うけれど、じょじょに近付いてみると、当たり前だけど、中ではちゃんと人間たちが息をしている。そういうイメージが頭の中や目の前を交錯してゆくような楽曲たち。
みのさんは、いつものちょっと苦しそうな搾り出すような叫び声も多かったんだけど、今日は笑顔もすごく多かった気がする。柏倉さんは、常に、笑ってんだか泣いてんだか…みたいな「イーッ」ていう顔でプレイしているけれども。みのさんが笑みをこぼしながら…っていうのは、ちょっとめずらしい気がした。(山嵜さん山根さんは笑ったりはしてなかったと思う)あ、途中で一回ミスがあって…その時に笑ってた(失笑してた)のとこれはまた別の話で。そうゆうんじゃなくて、なんか、自然にふっとこぼれた笑みのように見えた。(たまたまキメの時にぱっと見たら何度か笑っていた(ように見えた)というだけかもしれない)
途中、山嵜さんが突然「なんか今日ギターの音、へん(=変)くない?」とか言い出して、柏倉さんがフロアタムの位置を直しながら「え?(山嵜さんの)音が?」って聞き返したら山嵜さん、「なんかさ、変だよね?」って、お客さんにまで同意を求めてみたり。みのさんは「何?どういうふうに変なの?わっかんない…」とかつぶやきながら笑ってたんだけど、山嵜さんはかなり納得がいかなかったみたいで、「なんかさー、もっこりしてるー…!」とかブツブツ言いながら、アンプのつまみをいじったりもしていた。で、柏倉さんが「もうOK?」みたいな目線を投げて、山嵜さんが「Trebleをあげてみましたっ」とか場内に報告(?)をして、それからやっと演奏再開。(てゆうかもっこりしてる音って何)
山嵜さん曰く「DVDの編集をしてるんですけど…全然終わりません」「なので、まだちょっと…(出せません)」らしい。まあ、アルバムがあれだけ延期してたことを考えたら…まだまだ余裕で待てると思う。だってアルバム、一昨年の秋くらいに「レコーディングするので年内はもうライヴしません」宣言してから約1年待った気がするし。去年の11月のライヴのDVDがまだ出来てないくらいはまだ良いほうだと思われ。
やっぱりいつも思うけど、toeの音楽って、"歌ってる"なあと。
みのさんがギターをわーわーやりながら絶叫している時、思わず、えびなさんとかが歌っている時の姿と重なったりすることがある。柏倉さんのドラムが多彩な表情を見せるのはもちろん、toeの放つ音全体が、まるで歌っているかのように雄弁だから。具体的な歌詞はないけれど、次々と音で景色を変えてゆくさまは、もしかしたら実際の歌以上のものがあるのかもしれない。温度があるんだよね、toeの曲って。歌は人間の体から出ているもので、木や金属で出来ている楽器たちから生み出されるものとは多かれ少なかれ違っているのは当然なんだけど。何か、そういうものを超えているなあ…という気がする。歌が楽器みたい…ていうのともまた違う。木の幹に耳を当てると葉脈を流れる水の音が心臓の音みたいに聴こえる…とか、そういうののほうに近い感じ。
 
toeのセットリスト↓("※"は、見えた分の紙に書いてあったタイトル)
 
・孤独の発明
・tremolo + delay(※TREMOLO)
・向こう岸から視る夢(※CHAOS)
・I dance alone(※DANCE)
・I do still wrong(※WRONG)
・velvet branc(※SPLIT)
・everything means nothing(※カポF)
・past and language(※MOON)
 
toeが終わったら、冗談抜きで一気に人が減ってしまった。入れ替わりで前に来た人も居たには居たけど。下がったというより帰った…んだろうなあ。さっきまでの混み具合がウソみたいに、フロアがいきなり隙間だらけになっていた。N(S)さんも居なくなってしまったので、一人でじっくりと見る。
にのさんは赤いムスタングに花柄のストラップ。黒いぴったりめの半袖Tシャツを着て、足下にはワウペダル(BOSSのだったかな…)とMAXONのアナログディレイ(赤紫で白い線が入ってる上面が正方形ぽいやつ)とBOSSの白いチューナーと…あともう1個くらいあったかも。けっこうシンプルだった(いや、ふだん見ている人達(某Iさんとか)が特にものすごく多いだけなのか…)。にのさんは割とぱっぱと準備を完了してしまっていたのだが、位置がごっそり移動していたドラムセットのほうのセッティングに結構時間がかかっていた。照明が落ちそうで落ちなくて、にのさんもちょっときょろきょろしたりしていた。
なんだか中途半端な感じで客電が消え、ドラムのカウントから演奏開始。ひょうたんはこれが3日連続ライヴのラストなので、一応覚悟(?)はしていたつもりだったのだけど………にのさんの声が…想像以上に枯れまくってるよよよ。うーん、なんか、見てるこっちのほうが苦しくなってくる。ただでさえ、ひょうたんの時のにのさんは、いーすたんの時のそれと比べて、ひどく緊張していてとてもとてもテンパっているのがこちらにもひしひしと伝わってくるというのに。さらに声が出ていないとは…。あああああ、みんな、ちがうんだよ、にのさんは普段はもうちょっと歌がうまいんだよ、今日は、3日連続でライヴしてるから、それで少し声が掠れてしまっているだけなんだよ、ほんとだよ、ほんとだよ、、、。思わず勝手に説明してフォローに回りたくなるくらい、にのさんは苦しそうに見えた。加えて、あとのおふたりの演奏具合も妙に精彩を欠いているように思えた。バンッとあうはずのところでわずかにリズムがずれてしまっている。うーん…こりゃ今日はほんとにぼろぼろかもしれない…せっかくのツアー(?)ファイナルだというのに……。
なーんて、最初はこんなことをえらそうに思っていたりもしたのだけれど。曲が進むにつれ、だんだんとひょうたんワールドに入り込めていっていたのが不思議。もともと特に美声というわけでもないしものすごい歌唱力があるというわけでもなく、曲調も強烈に個性的というほどではないし、(個々はハイレベルだけど)バンドとして恐ろしく神がかったグルーヴを生み出しているという域にまでは達しきれていない(と思う)のだけど。なーんか、良いんだよね。いーすたんともまた違ったあたたかさや心地よさがあるというか。朴訥で、穏やかで、でも奥には熱いものを秘めていて。表向きは淡々としているのに、時折激情が顔を覗かせるという、そういう感じが。
1曲終わったところでにのさんが「ちょっと、のどがかれてまして…」とMC。すんごい失礼っちゅうか何様だよって感じなんだけど「あ、自ら(のどが不調だと)言ってくれてよかった…」なんて思ってしまった。いや、不調ですって宣言すればかすれ声で歌ってもOKってわけじゃないけど。このライヴが初めての人だっているんだしね。でも、なんか、今日のにのさんは本調子じゃないな…って思ってたから、おそらく初見の人が多かっただろうし、ちょっと「いつもこう」だとは思われたくなかったというか…。(余計なお世話ですかそうですか)
にのさんが突然お隣の奥平さんのほうを指して、
に「あの…こうゆう顔…が、日本人のスタンダードっていうか」
奥「…え?」
に「こうゆう…系統の、顔がね、これぞ日本人!みたいなね」
に「そういうふうになればいいなあ…って思ってるんですけど」
と。
奥平さんもお客さんも「???」っていう反応だったんだけど(てゆうか、言ったにのさん本人も、うまくまとまんないなー…みたいな顔をしていたような気がする)、これ、次の曲の前フリだったらしい。たぶん新曲?で「あのかお」という曲。歌詞には特に日本人どうのとかスタンダードどうのとかいうのは無かった(と思う)けど、タイトルに繋げたかったのかなーと思った。よくよしのさんもこういう繋ぎ方するもんね。話の内容自体は曲の歌詞とかとはあんまりリンクしてないんだけど、単語がかぶってる…みたいな。にのさんもこうゆうことを(緊張しまくりのコチコチなご挨拶とかではなく)MCでやるようになったんですなー…。なんだかちょっと驚き。
割と激しめの曲「通り雨」に続き、「宇宙の傍らで」。この曲ほんと良い。この曲は、たとえばよしのさんとかみたいな声量のある人が歌うよりも、にのさんが歌うほうがしっくりくる曲だと思う。上手すぎる人が歌うとむしろこの曲の旨味を消しちゃうような気がする。この素朴で平淡な感じの声が、曲によく似合っている。変に張り上げないこの歌い方が、宇宙の"傍ら"に居る感触をとても自然に表現しているのだとすら思う。ひょうたんの時のにのさんはギタリストだけれど、歌の手触りとかが、いーすたんの時に鳴らしているベースの音みたいなあたたかさをもっているような気がする。楽器が変わってもにのさんはにのさんだ…って、この曲を聴くといつもそう実感してしまうのは、そういうゆえんなのか。
新曲「陰り無き日常」。サイトで配布しているMP3は、ダウンロードはしたものの未聴だった。さすが単品で配布しているだけあって、強い曲だなーと思った。強いというのは…なんというか、例えばシングルを出すならこれは候補に入るだろうな…というような。バンドのカラーを特に強く主張しているというか、耳に残る曲。そのうちまたMP3も聴いてみよう。
「あと2曲やります」というにのさんのMCから、「円い月」「月のことだま」と、月の曲を立て続けにやって本編は終了。なんかちょっと思ったんだけど、ひょうたんの曲世界って、月に似ているような気がする。正確には円じゃないし、表面もぼこぼこしているんだけど、なんだか安心してしまう独特の黄色、あのまあるい形。時折見せる暗黒面や満ち欠け(変化)。近かったり遠かったりするところ…などなど。
だいぶお客さんも減っていたし、ライヴ中の場内の反応も微妙だったから、アンコールの拍手が起こらないなんてことになったらどうしよう…とすこし不安だったのだけれど。一応パラパラと拍手はあって、すぐにメンバーが出てきた。曲そんなにあったっけな…とか余計なことを考えてしまったが、アンコールは、新曲と潮騒をやってくれた。新曲のほうは歌詞に「こんなはずじゃなかった〜」みたいなフレーズがあったような気がする。ちょっと暗いというか、どろどろとした感じの曲。潮騒は、もうにのさんの声が限界!という感じではあったけど、やっぱり力強くて、かっこよかった。
全体的に盛り上がりには乏しい感じがしたけど、まあいいライヴだったと思う。にのさんの声が枯れていたことを差し引いてもじゅうぶんに。
そういえば、にのさんがグループイノウ佐藤さんのズボンをほめて(?)いたのって、どこでだったっけ…。突然にのさんが「さっきのグループイノウの佐藤君が穿いていたズボン、あれすごいよね。だってツータックだよ?今時なかなか見ないよ。あれ、いいよねえ…!流行らせたいね、男も女も、ツータックパンツ」とか言い出して、お客さんも、微妙な感じではありつつも、なかなかにウケていた。そして「俺も今度ライヴで穿こうかなあ…ツータックパンツ」とつぶやくにのさん。(次のいーすたんのライヴでにのさんがぶっといズボンを穿いていたら佐藤さんの影響ってことですな)(見たいような見たくないような…)(てゆうか女子もツータックパンツて…)
 
SET LIST(ひょうたん)
 
・僕が笑う向日葵のように下品に
・あのかお
・通り雨
・宇宙の傍らで
・陰り無き日常
・円い月
・月のことだま
−−−
・新曲
潮騒
 
物販をちらりと覗いたりしつつ、後ろから美濃さんが階段をあがってきたのでドキドキしたりしながら、JRなどに乗って帰宅。